私がトレイルランニングと出会ったのは、2015年でした。
15年間ほどIT系の仕事に携わり、忙しくパソコンと向き合う日々でしたが、ある時、時間の余裕ができ、久しぶりに登山に行きました。近くの山に登ると、半袖短パンで走ってくる女性と出会いました。どこから来たのか聞いてみると、「30kmほど離れた山から走ってきた」と言います。
こんな華奢な女性が、たった一人で、登山では到底考えられないような長距離を走ってきたのか、と驚くと同時に、「自分もやってみたい」と興味を持ちました。それ以来、近所の山を走ったり、レースに出るようになりました。
最初の頃は、一体どんなコースを走れば良いのか分からず、書籍を購入したり、雑誌を読んでメジャーなコースを探しました。
その経験をもとに、ランナー同士でコースを共有できるサービスがあれば良いと考えて作ったのが、IBUKIです。当初はランナー同士でコースを共有するサービスでしたが、さらに転機が訪れます。
ある時、京都の自宅から、三重の実家まで、山ばかりをつないで走ったら面白いと思い、滋賀県を南回りで2日間、北回りで9日間かけて走りました。合計11日間かけて、滋賀県一周の道のりを踏破しました。
地図の上に大きな一周の足跡を残したい、という個人的な想いで行った取り組みでしたが、この取り組みを見たメンバーとともに、滋賀県を一周するトレイルをつなげ、大会を開催しよう、という機運が高まりました。
その後、有志メンバーとともに「NPO法人滋賀一周トレイル」を設立し、日本最長級、440kmのトレイル整備と、大会の実施、運営の活動を続けています。
この「滋賀一周トレイル」を使った超長距離イベントを運営するために生まれたのが、IBUKI GPSです。GPS端末を使って選手の現在地が分かるようにし、過酷な山岳地帯を、昼夜を通して進み続けるランナーたちを見守り、安全を確保し、タイミングよくサポートができるようにし、応援できるようにする。そのためには、高い頻度で位置情報を取得でき、長時間稼働する軽量の端末と、見やすいシステムが必要でした。
登山やトレイルランニングをやってきた自分の経験や、滋賀一周トレイルという過酷な現場で実際に使えることを基準に、システムを開発しました。
その後IBUKI GPSは、全国各地のFKTイベントやレースで使われるようになりました。IBUKIには、現在地が分かるだけでなく、レースの計測システムとしての機能も加わり、レースを安全に、且つ魅力的に運営するツールとして活用されています。
このようにして生まれ、発展してきたIBUKI GPSですが、イベント以外の日常生活でも、大いに活躍します。
普段個人で山に行くときも、IBUKI LIVEのリンクを家族や友だちに共有しておけば、自分の現在地を知ってもらい、応援してもらったり、もしもの時にも居場所を把握してもらうことができます。
たくさんの運営者が見守るイベント時よりも、むしろ一人や少人数で山に入る日常的な活動の方が、実は位置情報を共有するメリットは大きいかも知れません。
個人的な経験になりますが、私はいつも山を走る時、IBUKI LIVEのリンクを家族や友だちに共有して走っています。いつも親しい人から見守ってもらっているという安心感がありますし、多少予定から遅れても、家族はあとどれくらいで帰ってくるかが分かります。
さらに、家に帰るタイミングに合わせてお風呂を沸かしておいてもらったり、ご飯を用意してもらったりと、良い思いをさせてもらっています。IBUKI LIVEがあるおかげで、家族にとっても安心ですし、ランナーにとっても、毎回毎回の安心感と充実感を感じています。
この恩恵は、トレイルランナーやハイカーなど、山に入る人なら誰でも感じられるものだと思います。
IBUKI GPSを使って、ぜひみなさんも、安心で、楽しい山の楽しみ方を実感してみてください。
OND代表 近藤淳也